性能障害対応で御用納めを越えてしまった。休日の今朝も 10 時過ぎ,顧客先の日野に向かった。JR 南部線から立川駅で中央線高尾行きに乗り換える。ここのところの苦しい毎日で鬱屈してドアの脇に佇んで外を眺めていた。日野駅の少し手前で,ほんの一時,輝かしい空の下,真白の富士が遠望された。こんなところから富士を望めるなんて。私はとんでもない発見をした気分になり,今日はもしかしてよいことがあるかもと少し心が晴れた。
顧客事業部の電算機センターに赴き,場内でのデバッグ,チューニング環境用に顧客にお願いして昨日仕込んだデータコピーの状況を確認するため,サーバのモニタをオンにした。なんとまだ終了していない。たった 100GB のディスクコピーが 24 時間経過してもまだ半分も完了していないのだ。昨日 10GB 経過した時点で今朝には終わる見込みを立てていたのに。Windows 2003 Server ってやつは!(*) この対策作業ではやることなすこと裏目に出てばかりで,たかだか複写操作さえもうまく行かないとは。愕然とした。顧客にその旨報告し,時間がないので,用意していた代替案に切り替えることにした。工場での環境作成は CSV データを入力とした一からの DB 構築が必要となった。
そのころ,顧客事務所の端末室で子分がソフトウェア工場から指示された DB 環境設定の試験をしていた。私が落胆して顧客事務室に戻ったところ,子分が「朗報です!」と嬉しそうに報告したのは,この環境設定が功を奏してシステム性能が目標値にまで改善されたことであった。まさに地獄から天国に昇りつめた思い。ああ,これで正月が迎えられる。目の前に富士の白峰。
帰りの電車にあって,ブラームスのピアノ協奏曲ニ短調が私の頭のなかで始終鳴り響いてしようがなかった。この曲は若い作曲家が人生の岐路に立って精神的危機を克服してゆく様をいかんなく表現していて,私にとって学生時代から苦しいときに己れを鼓舞するに相応しい名曲のひとつである。帰宅してから一風呂浴び,子供たちが観ていたテレビの特番を消して子供たちを追っ払い,ビール片手に,レコードを掛けた。
その特番は平成の少年犯罪についての世相バラエティであった。1983 年生まれの少年たちの「誰でもよかった」との動機による殺人事件。「大人は建前ばかりで汚い,などとほざくお前らガキどもは,嘘吐きで,卑怯で,強い者にへつらい弱い者にキバを剥く。ふざけんな。甘えるな。ガキは失せやがれ!」と私は息巻いて子供たちを罵り,レコードを掛けた。子供たちは「はいはい」とばかりに理不尽な父をウザがって自室へ退却した。
針を落とした LP レコードはダニエル・バレンボイムのピアノ独奏,ズビン・メータの指揮,ニューヨーク・フィルハーモニックの管弦楽による演奏。悲劇的にして天上的。人生への勇気。子分たちよ,ありがとう! 以下にその CD をあげておく。
ズビン・メータ(dir)
ニューヨーク・フィルハーモニック
ソニーレコード(1997-10-22)
※左イメージは LP ジャケットのもので実際の商品とは異なります。