Technics SL-01 カートリッジ・シェル交換

Technics DD Record Player SL-01
Technics DD Player SL-01

アナログ・プレーヤ用カートリッジのシェルを交換した。ネットで Technics 製 SL-1200 用の漆黒のシェルを手に入れた。屋根裏部屋で愛用しているレコード・プレーヤ(Technics が 1977 年に販売したクォーツ・ロック式ダイレクト・ドライブ・プレーヤ SL-01)では付属品のシェルを使用していた。キズが目立っていたので替えることにしたのである。私は決してオーディオ・マニアというわけではないけれども,好きな音楽をよりよく楽しみたいとの思いは人並みにある。

アナログ・プレーヤの調整は面倒である。そこが趣味の趣味たる所以である。デンオンのカートリッジ(DL-103R)を取り付け,オーバーハングを Technics SL-01 指定の 52mm に調整する。オーバーハングとはシェルの根元から針先までの長さであり,レコードの盤面の中心に向かってなるたけ半径の線に沿って針が位置づけられるようにするための設定である。次に,ピックアップをプレーヤのアームに固定して,針圧,アンチスケーティング,アーム高を調節する。アンチスケーティングというのは,アームがターンテーブルの内側に向かって力が働いてしまうのを打ち消すための圧力調整である。このように,アナログ・プレーヤは CD とは違って,音源ピックアップ部の機械動作が原始的なだけに,レコード音溝をトレースするのに適したバランス確保のための様々な工夫がなされている。

アナログ・レコードの音質は透明感においてデジタル CD には適わない。あのプツプツいうスクラッチノイズも不可避的なものである。それでも私は 30cm の黒い円盤がゆっくりと廻っているのを眺めながら,ピアノや室内楽のアナログ・レコードを聴くのが好きである。古い録音のジャズやビートルズ,ボブ・ディランなど,CD で聴くと端正すぎて音作りの古色ばかりが再現されてしまうけれども,LP だと一種独特の開放感と野性味が私にはありありと感じられる。思い過ごしだろうか。

中学生のころからロックやクラシックの LP を少しずつ (大人買いということをしたことがない) 買い集めて,やっと 400 枚くらいである。CD の時代になり,社会人になって懐銭が増したことも手伝って,あまり吟味せず買い求めて来たおかげで CD の数は LP の 2 倍くらい蓄積されたけれども,いまだにアナログ・レコードに愛着がある。一枚一枚に青春の感傷がこびり付いているのである。

昔なにかの映画で,若かりし桃井かおりがアパートの狭い部屋で悲しみを抑えつつ,ポータブル・プレーヤでモーツァルトの交響曲のレコードを掛けるシーンを観た。また,映画『ツィゴイネルワイゼン』では,妖艶・大谷直子がサラサーテの盤を蓄音機に掛けて,藤田敏八をもてなす場面があった。いずれも,その回転する円盤がなにかを象徴するようなロマンを放っていてよかったのである。