昨日は会社で午過ぎ,子分からオリンピック野球日本チームの敗戦を伝えられた。何人かの社員がどうにも気になって会議室のテレビで応援していたらしい。2002 年のサッカー日韓ワールド杯を思い出した。「なにぃ,おめぇ仕事放ったらかしてテレビ観てたのか! 俺も呼んでくれよ!」
私は帰宅してからその模様を NHK の録画映像で観た。日本戦の延長で,バレーボール・ブラジル vs イタリア戦,テコンドーの試合まで観てしまった。それにしても,野球では韓国,キューバは強かった。韓国は渋い勝ち方で金メダルを獲得した。予選を通じて一敗もしていないことが韓国野球の技術の一流だけでなく集中力の強靭をも証明した。普段日本のプロ野球しか知らないわれわれは,こうして蒙を啓かれるのである。
星野ジャパンは,昨日は韓国に破れ,今日は米国に破れ,必達のミッションだった金メダルはおろか銅メダル獲得も果たせなかった。日本全体が代表の不甲斐ない結果の「戦犯」叩きに忙しいように思われる。ネットの書き込みは星野監督の采配,G.G.佐藤選手の落球を非難する内容で溢れかえっていた。またストライクゾーンの違いを敗北の要因に持ち出す自己中心的思考家もいた。仮に国際試合の判定が国内リーグとずれていたにせよ,対戦相手と条件は同じなのだし,ある意味で地域予選から分っていたことであって,戦いにおける環境適応力について日本チームが劣ったことに違いなく,これは負け惜しみでしかない。テレビを観た誰の目にも実力の差ははっきりしていた。完敗なのだ。
しかし,相手を知らずして金メダルが当たり前のような雰囲気だった日本の野球ファンのほうがよっぽどおかしかったのだ。日本の選手たちはベスト4に入ったのだから少なくとも責められる謂れはないように思う。観ていて面白い試合は予選の韓国戦だけだったとしても。
野球では期待が高かっただけいっそう落胆も激しく,サッカーでは予想を違えずダメでやっぱりかーの虚無感に打ちひしがれた。とはいえ「難しいけどもしかして」の女子ソフトボールが起死回生の金メダルを獲得してくれたんだから,バランスが取れている。
中国が五輪史上の金メダル獲得数で一位になったという。北京オリンピックに向けてあらゆる競技で計画的に強化してきた成果だろう。野球で台湾に勝利するというサプライズを起こしたし,シンクロナイズドスイミングでも日本を抑えて銅メダルを獲得して第一線に躍り出た。従来から強い競技以外でも目立っていたと思う。人口の多い国だから不思議ではないというひとがいるかもしれないが,五輪やワールド杯のみならず国民の活動成果が人口規模に依存しないのは自明である。10 億人以上の人口を抱えるインドの五輪成績は? 日本の半分以下の人口しかない韓国は,野球だけでなく,日本よりメダルの数は上なのである。ヨーロッパ諸国はいうに及ばず。五輪という国威発揚の場に向けた各国の努力が如実に結果に現れているのである。メダルランキングで低い国であるインドやイスラム諸国も,運動神経が他の国々よりも劣っているのでは決してなく,五輪などよりもっと大切な目標をもっているのに過ぎない。
この調子でいけば中国が男子サッカーで日本を追い越して行くのも時間の問題である。韓国,オーストラリア,イラン,中国と指を折ってみる。日本は 2010 年を逃すと 1998 年以前のような,ワールド杯出場とは無縁の長い氷河期が再び訪れると思う。
でも私はそれでよいと思う。日本人はオリンピックや野球やサッカーやでなんかよりもっと崇高な分野でこそ,世界における名誉ある地位を占めなければならないし,その役割を発揮しなければならないし,できると私は思う。