『改訂新潮国語辞典 — 現代語・古語』を古書で入手した。久松潜一博士監修。山田俊雄,築島裕,小林芳規という国語学の泰斗が編修している。これは現代語と古語を総合的に取り扱った国語辞典である。中辞典なのに用例の出典がきちんと示されている。語釈も癖がなくてよいと思う。私は高校生のころからこの版を愛用しているが,もう 30 年近く参照したためにボロボロに草臥れてしまっていた。あまりに愛着があるので,修理まで考えたくらいである。保存のよい古書を手に入れて,いま少しハッピーな気分なんである。
私の思い入れは昭和 55 年に出た改訂版にある。現在流通している第二版 — 亡くなられた久松博士の名はもはやない — はサイズが大きいし,ビニカフ装丁のふにゃふにゃで安っぽくて嫌なんである。私が昭和 55 年改訂版に固執するのは,杉本健吉による古風な装丁,コンパクトなサイズ,美しい活字,四段組みのレイアウトといった外面である。辞書は常に座右にあるものなので,万年筆などと同じように,モノとしての側面も内容に劣らず重要なのである。