レティシア・ランドンのロマンス論

今日,和歌山在住の英文学研究者である友人から,彼女の論文を収録した論集が二冊届いた。『ロマンティシズム — 英米文学の視点から』(文学と評論社編,英潮社,2007年)と,"WOMEN'S STUDIES, Volume 36, Number 4 June 2007" (Routledge, Taylor & Francis Group) である。後者は英文。

友人の日本語論文だけを読了した。Letitia Landon レティシア・ランドン (1802-38) のロマンス論である。14 頁の短い論ではあるが,ロマンスの物語性を「交換」という概念でとらえた好篇であった。専門家でなくても,詩人ランドンの「詩とその代償としての死のイメージ」が興味深かった。作品『金いろの菫』の危険な二義性(詩人の最大の酬い — 読者の真の感動 — としての「純粋な贈与」と,商業的成功としての「金銭的消費」)をランドンの現代性(商用ジャーナリズムの帯びる二面性という意味において)に結び付けている点も面白かった。

文体も学術論文らしく丹念で丁寧であって,抑制が効いているがゆえに香気を感じさせるもので,感銘を受けた。気取りが微塵もない。事実を事実として,意見を意見として,見たものを見たものとして書く態度こそが文体というものを構成するのだ(ところで「文は人なり」というのは私の大嫌いな言葉である。分ったようなことを言うでない。芥川も「『人は文なり』ということか」と皮肉混じりにどこかで書いていた)。

すぐ感想をメールで書き送った。英文の論文は,気合いが高まるのを少し待って読もう。

最近,私はプログラムを書いてばかりいて,文学から遠のいてしまっている。