ちくま文庫950,駒田信二著『漢詩百選 — 人生の哀歓』。旅情,望郷,戦乱,別離,情愛というテーマで編んだ漢詩百編のアンソロジーである。漢詩が読みたくなることが私には一年のうちに必ず一度はある。簡潔明澄という意味で森鷗外よりもプーシキンよりも一際高く聳えたっている。
白楽天の妻を思う次の詩は,思わずほろりとさせられる。
贈內 內(つま)に贈る
漠漠闇苔新雨地 漠漠たる闇苔新雨の地
微微涼露欲秋天 微微たる涼露秋ならんと欲する天
莫對月明思往事 月明に対して往事を思うこと莫れ
損君顏色減君年 君が顔色を損じ君が年を減ぜん