今日晩ご飯を食べながら,家族でテレビを観た。テレビ朝日の『ミュージックステーション』。録画したものだったと思う。息子も,娘も,B'zなどが登場すると夢中になって観ている。最近の十代の若者はテレビやビデオ,CD,ゲームで有り余るエンターテーメントを享受している。昔はラジオをよく聴いたけど,とふと思った。少なくとも息子は勉強中にラジオを聴いている様子はない。
もう四十をとうに越してしまったわけであるが,私の世代は皆,ラジオを熱心に聴いたのではないだろうか。高校生のころはラジカセ(ラジオ付きカセットテープ・レコーダー)が一番の宝物であった。ラジオの深夜番組を聴きながら,受験勉強をしたものである。関西にいたので,MBSヤングタウン,ABCヤングリクエストなどなど。後者は毎日落語を一席流していて,それが楽しみであった。受験勉強そのものも,旺文社ラジオ講座のお世話になったものである。
ラジオ大阪の深夜放送,笑福亭鶴瓶と新野新の『ぬかるみの世界』は欠かさず聴いた(鶴瓶さんは私の高校の先輩でもあり,なにがあろうと応援したい落語家なんである)。これは日曜日のブルーな深夜に放送され,リクエスト音楽を流さず,彼らの隠微な — 往々にして淫靡な — 四方山話だけで成り立っていた,いまや伝説的な番組ではないかと思う。意見の食い違いから二人の壮絶な口論が始まってしまうこともあり,聴いていてドキドキした。新野が俳優にも格式があるということを語っていたのを思い出す。確か,ハリウッド女優がテレビに出るなんてありえない,というような話題になり,曰く「原節子が吉本新喜劇に出るわけないやろ!」。それ以来,原節子を映画で観るたびに,吉本新喜劇でお笑いをとっている彼女を想像してしまう。
タクシーに乗るとNHKの『ラジオ深夜便』が流れていることがよくある。NHKアナウンサーの生真面目な声が,激務に疲れ果て,ボロ雑巾のごとき我が身を憐れむ深夜帰宅の身に,カンフル剤のように沁み渡る。ラジオを聴くと「皆,孤独なんだ」ということを感じるのは私だけ? 今の若者がのめり込んでしまうラジオ番組があるなら聴いてみたい。