論文修正,ぶら下げ組み

社会人でも投稿できるスラヴ学研究誌を見つけた。査読してもらえるだけでも意味があると思い,オネーギンについての論文を投稿したいと思っている。そのためにこのお休みで書き直しを行った。募集は 11 月とのことであるが,因果な商売でいつまとまった時間がとれるとも限らないので集中して仕上げた。投稿規定は B5 版で 20 枚程度とあるので,半分以下に切り詰めなければならなかった。統計分析にはこれまでずいぶん時間をかけたのだけれど,この際ばっさり落とすことにした。

この論文集は「電子データ」で入稿することになっているけど,その形式の規定がない。一応研究室の方に PDF でもよいかと問い合わせたところ,とくにだめとはいわれなかった。私は TeX でタイプセットした結果を PDF にして応募しようとしている。電子データ=Microsoft Word だったりしたら愕然とする。世の中には「コンピュータの電子文書」というと自分の使っているワープロのデータのことだと思っているひとがいるのだ。PDF についての問い合わせが無視されたわけではないので,まさかそんなことはないと思うのだが,少し心配。

論文修正のために,というわけでもないが,LaTeX でぶら下げ組みを行うマクロスタイルを作成した。microtype という protrusion を指定できる素晴らしいパッケージがあるが,残念ながら pdflatex でしか使えないし,ロシア語フォントもサポートされていない。今回は欧文,和文それぞれ TeXbook,藤田先生の『LaTeX 本づくりの八衢』に載っている例を拝借し,自作した。カテゴリーコードの変更設定ができるようにしたこと,欧文用 LaTeX2e でも使用できるよう platex 環境のみ和文の定義を通すようにしたこと。私の工夫はそこだけ。論文で使ってみて,なかなかよい。

いちおう hanging.sty (ISO 2022-JP=JIS UNIX 行末形式) をリンクしておくので,関心のある方は自己責任で利用してほしい。

使い方は,文書のプレアンブルに \usepackage{hanging} を指定する。パッケージオプションに jpnoglue を指定すると和文句読点へのグルー挿入を禁止するようになっている。欧文の句読点をぶら下げたい場合は,\activehanging を宣言すると,以降 \disablehanging が指定されるまでぶら下げ組みが有効になる。対象文字は .,;:`' である。カンマやコロンなど,マクロで重大な意味を付与されている文字の属性を変更するので,使用ポイントには注意いただきたい。もうひとつ注意事項がある。\activehanging を宣言した場合は,\end{document} の前で必ず \disblehanging を発行しておかないと,aux ファイルなどの処理で問題を起こす。和文については 「\。」のようなコントロールシーケンスを用いることでぶら下げ組みとなる。\。\,\。\,\)が指定できる。その他たくさんの括弧類はぶら下げ対象とはしていない。いちいち句読点に \ を付けて記すのは面倒なので,普通に書いて,コンパイルの直前で sed などで一括変換するような使い方がよいかも知れない (私はそうしている)。

しかしながら,和文に特化したぶら下げ組みならば,藤田眞作先生のサイトにある burasage パッケージをお勧めする。

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藤田 眞作
アジソンウェスレイパブリッシャーズジャパン