Perl 詩

プログラミング言語で詩を書く人がいる。

Perl と Unicode についてきちんと解説した本を探した。数あるなかから,Simon Cozens の書いた『実用 Perl プログラミング(第2版)』を選択した。『Perl で遊ぶ』という章があり,Perl 詩について触れられていた。こういう話題も等閑にしないところが O'Reilly の良書の所以。それだけで買った価値を認めてしまうのは私だけ?

著者による Perl 詩を引用する。(同書, p. 288)

for (long => time) {$early && $self->went($bed);}
rand time && do {
    while ($candle--) {
        (time => $eyes->shut()) < (time => print "Falling asleep!")
    }
};

どこかで読んだ気がするなあとしばらく考えてわかった。これは,プルーストの À la recherche du temps perdu のあの有名な書き出しの,Perl 言語への「翻訳」である。書いた本人には失礼かもしれないが,米国の自由人による凝りに凝ったジョークだろうと思う。Sharon Hopkins など,Perl 詩で評価されている詩人もいるのだとか。米国のソフトウェア文化の奥深さを感じずにはおれない。

ちなみにこの Perl 詩はプログラムとして「実行可能」であるが,黙して語らないところも面白い。詩はなにものにも奉仕しないということか。また Sharon Hopkins の作品は,ls-la.net: Best of Internet サイトなどで閲覧できる。

もちろん本書は,上級プログラマ向けの,他の Perl 本では得難い題目について,具体的コードを示して解説している。なかでも自然言語解析の章は,この手の書籍では通常の拾い読み,参考の程度ではなくて,まじめに精読する価値がある。Perl の腕を上げたいというより,Perl 言語基盤によっていかに自分の課題を解決できるのかを探りたい。そういうひとに本書は向いているのではないかと思う。

 
実用Perlプログラミング
サイモン・カズンズ Simon Cozens, 菅野 良二訳
オライリージャパン (2006/03)