午后,娘のピアノ練習に付き合う。ショパン遺作の嬰ハ短調ノクターン。終末に現われる小刻みの音階を,まだうまく弾けない。二拍の間に 35 の音符をさりげなく打鍵するのは難関である。「夏休み中にマスターすること」。
一週間前にいいつけた暗譜は完全になっていた。暗譜といい,メロディーを聞いてすぐさま弾きはじめてしまう能力といい,私には逆立ちしてもできないことが小学生にいとも簡単にできてしまうのは,親バカとはいえ,感心する。それは,娘に特別の才能があるからではなくて,音楽という型・言語を,修練によって身につけつつあるということなんだと思う。