北朝鮮がとうとう,本当にミサイルを発射した。意図が理解できない。枕を高くして眠れない時代が現実になりつつあると思う。7発も連射しておいて,また昔みたいに人工衛星だなんて説明するんだろうか。
政府の対応がまた理解できない。制裁として,北朝鮮の船舶を「とりあえず」「半年間」入港を禁止するとか。どういう考え方から「半年」という期限が出てくるのか。北朝鮮の「シワク?(オモワクだろ)を分析中」との,麻生外務大臣のテレビ出演時の意味不明なコメント。米国による金融凍結制裁が「効果的」だった,ゆえにマンギョンボン号の入港禁止が「効果的」と断言できるのはどういう論理だろうか。「効果的」ってなに? そもそも発射させないことが「効果」の目的なのではないんだろうか。着弾推定場所のことを「ソ連」沿海といい,衝撃のことを「シュウゲキ」といい,思惑を「シワク」といい,このお方は次期首相候補のひとりなんだそうである。まったく理解できない。
政府は制裁措置をいくつか挙げて,なおも「検討中」だという。ミサイル発射の危険性はひと月以上前から問題になっているのに,実際に発射されてから「検討」しているのも理解できない。発射したらこれとこれとこれを発動すると予め宣言しておき,実際に発射されたらそれを行動に移すととともに,予め秘密裏に用意しておいた追加の措置をもって臨むのが外交戦略というのではないのだろうか。「やったらとんでもない制裁をおみまいする」といっておきながら,事が起こってはじめて「なにをしようか」,である。これこそ北朝鮮だけでなく諸外国からバカにされることではないだろうか。「シミュレーション」以前の問題だと思う。こんな外交力で強硬路線なんて柄でもないことはやめてもらいたいと思う。
自民党の会合で,国防能力の強化を主張する声が強かったとの報道も見た。いまさら何をいっているのか。もとよりイージス艦など相当の投資をしているのに状況の確認が進まないのはなぜなんだろうか。このへんの各国の出方を見るというのが北朝鮮の目的のひとつだとしたらたいした賭けである。確かに防衛網が機能しているように見えないのは私がうといだけか。
政府は被害状況を確認中と言い続けている。着弾したとされるロシア沿岸海域の漁業組合を取材していたテレビ局のほうがよっぽど手が早い。日本海沿岸の自治体もなにがなんだかわけがわからず,「断固糾弾する」との議会決議ばかりに大童である。娘は日本海の魚がたくさん死んだのにちがいない,かわいそう!といっていた。もしかしたら明日米国か日本本土に本当に着弾し,たくさんのひとが死ぬかもしれないのだ。常識も冗談も通じないへんな国にも頭にくるが,子供じみた政府にはもっと頭にくる。
去年,ハンフリー・ホークスリーの『北朝鮮最終決戦』というクライシス小説を読んだ。その結末は北朝鮮の核生物弾頭ミサイルをめぐって超大国が牽制しあうなか,中国とロシアが連合して米国と日本を核攻撃するというものだった。そこに至る経緯は本書を読んでいただくとして,北朝鮮は中国の鉄砲玉みたいな描かれ方だった。今回の事件,中国とロシアはどちらかというと静観している。恐。