結婚十六周年の記念日,ミューザ川崎シンフォニーホールでコンサートを聴いた。妻と娘の三人で出かけた。息子の学校のコネでチケットが安く手に入った。当の息子は,もとよりクラシック音楽にはまったく興味がなく,クラブ活動に。
東京交響楽団名曲全集第17回コンサートとのことで,演目はバーンスタイン作曲『キャンディード』序曲,シベリウス作曲ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47,レスピーギ作曲交響詩『ローマの松』,『ローマの祭』の四曲。指揮は飯森範親,ヴァイオリン独奏は滝千春であった。
私はなんといってもシベリウスの協奏曲が楽しみであった。オーケストラもソリストも期待を裏切らなかった。弦のさざ波のようなトレモロのなかから哀切なヴァイオリンのソロによるテーマが浮かび上がってくるはじまりから,丁寧でオーソドックスな演奏がとても良かった。二十年ほど前,この曲をギドン・クレーメルの独奏,アルミン・ジョルダン指揮,スイス・ロマンド管弦楽団の豪華な演奏で聴いたことがあり,そのときもクレーメルの素晴らしい技巧と管の輝かしい響きに感動した。今日の演奏では,わざとらしさのない節廻しや細部の丹念なこだわりが感じられて,若い指揮者と独奏者の才能が眩しかった。
娘は明るい曲が好みなので『キャンディード』がよかったそうである。シベリウスでは,独奏者が休止の間肩をいからせて体を左右に揺らしていた。そのちょっとふてぶてしくもみえる姿が娘の印象に残ったらしい。私もこれは少し気になったのだが,いずれ凄いソリストになるに違いない。滝千春はまだ十九歳だという。
オットリーノ・レスピーギ作曲のローマ三部作は,これまで私にはやかましい曲のイメージしかなかった。しかし,人間が実際に演奏している様を目にしながら聴くと,いろいろな楽器が入れ代わり立ち代わり脚光を浴びるような聴かせどころがあって魅力的な楽しい作品なのだということがわかり,オーケストラの華やかさが好きなひとにはこたえられない名曲なのだと思い直したのだった。
Pittsburgh Symphony Orchestra
EMI (2003/10/21)
これはレコード演奏で私がもっとも好きなもの。今日の演奏と同じく,管弦楽も独奏も,丁寧でかつ自然な感動的な名演奏だと思う。パールマンの独奏も見事だけれど,ピッツバーグ響の管弦楽が特筆される。日本盤は現在では入手できないようである。
レスピーギのローマ三部作は,小澤・ボストン響による録音をよく聴いている。