ロシアの書籍を Ozon で注文するようになって二年になる。このロシアのインターネットマガジンサイトは,ソヴィエト時代のよい古書が出るし,クレジットカード決済ができ,海外発送してくれるので重宝していたのだ。注文してから届くまで早くても二ヶ月を要し,商品の到着前に代金が引き落とされるのがちょっと不満なのだけど。世がインターネット時代となり進歩したなと私が思う数少ない事象である。
外貨レートの恩恵もあり,かつて学生のころ欲しくてたまらなかった書籍を次々と Ozon で入手できた。かの有名なプーシキン語彙辞典,詩人文庫の 1820-1830 年代詩人集,ヴェネヴィーチノフ全集など,もう手に入らないと思っていたテクスト。ロートマンのオネーギンの注釈書,トゥイニャーノフ,ジルムンスキイ,ヴィノグラードフ,トマシェフスキイなどの,学生時代,大学の図書館で首っ引きで読んだ文芸理論書,プーシキン研究文献。オリガ・フレイデンベルグ(詩人パステルナークの従妹でもある古代文学研究者)の幻の名著,1936 年版 Поэтика сюжета и жанра(邦題『プロットとジャンルの詩学』)がスターリン時代,独ソ戦争,東西冷戦を潜り抜け,刊行後 60 年以上を生き延びて,私の手元に届けられたときは感激したものだ(ちょっと大げさ)。こんな古書が比較的保存状態のよいものでも,500 ルーブリ(約2000円)程度なのだから驚く。
ところが,最近になって海外からの注文が不可になってしまった。メールで問い合わせてみると,古書とディスク媒体製品の海外発送が一時的にできないようになっているとの回答があった。しばらくすればまた可能になる見込みとのこと。「いましばらく」とはロシア時間では,どれくらいなのだろうか。
もし今後もダメとなると至極残念である。