ウクライナ情勢に注目

親ロシア政権と EU 統合派との対立が流血の事態に発展し,国際世論のみならず政権政党内からも非難が噴出し,ヤヌコヴィッチ大統領が国外に脱出し,親 EU 政権になったウクライナ。とうとうロシアが軍事介入したとして,目下大問題になっている。フェイスブックのウクライナ人の友人の投稿も,最近は政府と市民との衝突の話題がほとんどで,私も少なからず注目していたのである。

ウクライナのことはウクライナ人に決断させる,平和裡にそれが進むことを見守る,というのが国際社会のあるべき姿である。ロシアに対する各国の非難は当然だろう。昨日の朝日新聞の天声人語では,ロシアは五輪という平和的祭典のころを見計らってキナ臭い大鉈を振るう鼻つまみ大国だ,みたいなことが書かれていた。確かに。

でも,ロシアは今回のウクライナへの軍事配備を「軍事演習」と称しており,確かにロシア軍とウクライナ軍の衝突が起こっているわけではなく,ロシアとウクライナとの間にはロシア軍の演習活動が認められる取り決めがあるようなので,あくまで国際法に準拠しているとの体裁がないわけではない。この事案はいまのところロシアが各国,とくにアメリカがどう出るかを確かめようという程度に見える。アメリカ,舐められていますね。シリア問題でロシアに諭され,その国際的パワーはかつてないくらいに低下している。

安倍総理は,北方領土交渉,この秋のプーチン訪日を視野に入れてか,対米従属根性に塗れた外務省の圧力にめげずに,抑制したトーンでこの事案についてコメントしていて,いま現在の状況では冷静かつ適切な振る舞いだと私は思う。アメリカは烈火の如く怒りまくっているわけだが,日本としてはもう少し様子を見たほうが得策ではないだろうか。新冷戦時代の到来か,みたいな朝日新聞記事は騒ぎ過ぎである。国内騒擾の煽りでいまウクライナは経済的危機に瀕している。日本は差し当たっては経済援助をなすべきだろう。

* * *

ウクライナはキエフという夢のように美しい古都を有する国である。私の大学時代の恩師たちは,皆若いころにソ連に留学したわけだが,イデオロギーで重苦しかったソヴィエト・ロシアと比べるとまだ自由な雰囲気のあったウクライナに惹かれ,皆ウクライナ贔屓になって日本に帰って来たという(同様に,ポーランド贔屓になる先生もいた。これは大ロシア主義者だった故・木村彰一先生から直接教えてもらったことである)。また,ウクライナは,若い女性が皆美人だという印象が私にはある(スラヴの例によって,中年になると体重百数十キロになるか魔女のように痩せるかの両極端なのだが)。一方で,この美女たちが政府に抗議するにトップレスでハンガー・ストライキをやってしまう,惚れ惚れするくらいの凄いお国柄である。隣の大国に踏みにじられてしまうことのないよう祈る。