立冬。秘密保護法案。日本版NSC。

金盞香さく立冬末候。いよいよ冬。主婦の方は米を研ぐ水の身に沁みるころとなった。今日夕刻,会社からの帰り,南西の空低く,宵の明星が寒々と輝いていた。帰宅して朝日新聞夕刊に目を通す。

秘密保護法案が 22 日にも衆院採決される見込みになった。「対象となる秘密とは何?」—「それは秘密です」。こんなふざけた法律が現代の法治国家で成立しようとしているなんて。日本はやはりエセ先進国としかいいようがない。

機密漏洩の処罰は公務員が対象らしいが,公務員による秘密漏洩に関与した一般国民も罰せられる可能性は否定されていない。なんといっても日本は,戦前・戦中,憲兵が本来の職務を大きく越えて一般国民をしょっぴくなんてことを平気でやったお国柄であって(憲兵=MP ミリタリーポリスとは軍内部,つまり兵隊の犯罪を取り締まるのが本来の仕事である),この秘密保護法についても官憲が,法を拡大解釈して,気に食わない一般国民を拘束しかねない。政府に歯向かう知識人がチクリみたいなたれ込み・表現の解釈だけでワンサカ検挙されるのではなかろうか。

この法案が可決・施行されたら,まず第一にアベさんが検挙されるのではなかろうか。なぜなら,五輪招致プレゼンで大ウソを吐いて日本の××を世界に晒したわけだから。このお方自体が日本の恥ずかしい国家機密を振りまいて歩いているようなものではないか。ソ連のジョークにこういうのがあった —「『スターリンはバカだ!』と叫んだ男が逮捕された。罪状は最高権力者侮辱罪ではなく国家機密漏洩罪だった」。

先の 11 月 7 日,安全保障会議設置法改正案,いわゆる日本版 NSC 設置法案が衆院を通過し,現在参院で審議中である。安全保障会議は,内閣でも国会でもないところで有事その他への対応を決める「会議」である。高度な秘密事項を扱うため,これは秘密保護法案とセットの法案である。ま,米国の国家安全保障局と同様,盗聴機関になるのだろう。ただし同類の足を引っ張るのが好きな日本では,海外の情報収集よりも,国内の邪魔者を失脚させるためのスキャンダル収集によりやっきになる機関になるのでは,と私は勝手に思っている。

米国では国家安全保障局長官は軍人である。日本版 NSC の議長は内閣総理大臣だというではないか。つくづくバカだと思う。米国の盗聴問題が大騒ぎになってもオバマ大統領は何も知らなかったフリができるのに対し,NSC 議長が国家のトップじゃそうはいかない。仮に日本版 NSC が海外政府要人をスパイ・盗聴していたことが明るみに出ると,議長である内閣総理大臣がその責任を取らさせられる。こんなアホな諜報機関ってあるか? だからこそ,日本版 NSC は実質なにもできないというわけである。せいぜい国内の邪魔者のベッドでの愛人との睦言をマスコミに流すくらいがセキの山である。