10÷3=4

私は本で見つけた面白い話を晩ご飯のときによく子供たちに話してきかせる。先日も,遠山啓の数学書のネタから,問題をメモ用紙に書いて子供たちに出してみた:「10÷3=4。どうして?」。

しばらくはわからない。ご飯を食べ終わり,煙草を吸い,メールをチェックし,コーヒーを呑んだ。「ヒント。時計」。もうしばらくして,中学二年の娘が答える:「わかった,1 ダースみたいに 12 が一纏まりの計算だから」。「ピンポン。そう,『十二進法だから』というのが答え。十二進法では十進法の 12 を 10 としるして,イチ・ゼロと言うわけ。普通は数字の右下に小書きで 10(12) と書いて十二進法だとわかるようにするんだけど。だから口で言わないで紙で問題を出したわけ。十進法が当たり前だと思うと世の中がきちんと見えなくなるよ。イギリスなんか 1 シリングは 12 ペンスで,まさに十二進法が生活に根付いていた(1970 年に十進法に移行した)。だからガイジンは計算がヘタなんだとしたり顔で言うバカな日本人がいるけれど,それは大間違い。十二進法のよいところはなに?」。娘はこれにはすぐ答えた。「1 ダースが 3 で割れること」。

子供は男子よりも女子のほうが大人びていて,知的にも前向きである。うちの子供たちにもこれは当てはまる。上の高校二年の兄は私のなぞなぞに面倒くさそうにしているが,下の娘は一生懸命考えている。ところが,これがサカリが付いて来ると,どうして見た目だけで物事の価値を判断するようになるのか。少なくとも私にはそういう女子が多いように見える。もちろん,長ずるに及んでいよいよ知性に磨きのかかる女性もいるわけなんだけど。

それは,男性の浅はかさが知的な女性を敬遠してしまうがゆえの,女性の守りのようなものかも知れない。昔から,人好きのする容姿でさえあれば馬鹿な女のほうが「可愛い」とされるところも,ないわけではない。最近は男さえも「おバカ」が支持されるまでになっている。「下流指向」というのが最近の若者の特徴なんだそうである。世も末である。

「お父さんは,可愛い女の子よりよく考える頭のよい女の子が,やっぱり好き。馬鹿なのに我が物顔の美人はもうサイテー」— もう,これを徹底して子供たちに吹き込んでいるんである。