今日もシステムトラブル対応で午前二時にタクシーで帰宅。車中の備え付け小型テレビに白血病予防キャンペーン CF が流れていた。本田美奈子の在りし日の姿。そこで思い出したのが松任谷由実。
私は松任谷由実が大嫌いである。もう二十年以上も前,大学生の頃,ラジオで松任谷由実が出演する番組を聴いていた。その頃彼女には,出すアルバムすべてがチャートインする破竹の勢いがあった。一方,本田美奈子も『1986 年のマリリン』がヒットして,リクエスト番組でしばしば耳にしたものだったが,松任谷は本田のことを「貧乏人がテレビで嬉しそうに踊っているみたい」とコメントし,私はそれを聞いてしまって,なにかこう,どうしようもなく松任谷の人間性を見たような気になって,それ以来,松任谷由実が大嫌いになってしまった。今の若者のセレブブームに覚えるのに似た性質の嫌悪感。今から思うと,80 年代後半のバカ世代,日本人の腐りはじめの予兆のようでもあって,なおのこと『貧乏人』発言は忘れようもないのだ。(私はどうも貧乏人の部類に入るからか...)
ふと口をついて出たひとことが,そのひとのイメージを決定的に規定してしまうことがある。ちょっと口が滑ったのだろうとどんなに思い直そうとしてもダメである。私はとくに根に持つタイプだとも思われないけれども。
それでも松任谷由実にも,その素晴らしさを否定しようのない作品がある。『水の中のASIAへ』がそれ。他の星の数ほどある彼女の作品はことごとくゴミのように思うのだけど,これだけは別格なのだ。私はこれを大学一年の春に FM で聴いて,独特の異国情緒に魅惑されてしまった。『スラバヤ通りの妹へ』など,いい知れぬ懐かしさを覚えるのである。『貧乏人』発言で心底げんなりしたその後も,やはり魅力的であることをやめない。このアルバムは 45ppm LP という形態で発売され,たった 4 曲しか収録していない珍しい盤でもある。次にあげるのは現在入手可能な CD である。