北大の浦井康男教授から論文のコピーが郵送で届く。表題は『近代ロシア文章語(散文)形成期の諸作家における造語体系について — ラジシチェフ,カラムジン,プーシキンの場合 —』。「北海道大学文学部研究科紀要 121 (2007 年 2月)」とある。
浦井先生は計算機を使ってロシア語テクストを解析する専門家であり,この分野では先駆的存在と目されていると思う。私はかつてプーシキンの語彙統計についてほんの少しだけ先生のお仕事に協力したことがあり,妻もザリズニャク文法辞書の電子化のお仕事を先生から頂戴したことがある。
本論文は三作家の語彙の文法的出現様式比較により近代ロシア文章語成立に果たした三作家の役割を論ずるという壮大な構想に動機付けられている。私はまだ流し読みしただけで,核心部の意味を吟味できていない。きちんと読んで,私なりの感想を送らなくてはいけない。
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もうひとつ,一日の日に,友人の T さんから私の『オネーギン』論文についての批評をメールでいただいた。英文学の先生をしている彼女は,露文学は門外漢だと謙遜していたが,さすが文学論文を見つめる眼差しには確かなものがあって,いくつか私の論考の問題点を適切に指摘してくれた。その指摘を踏まえて見直しに取りかかろうと思う。