書き手はここはタイトル、これは引用文、ここに図版をいれてと文書の内容と 直接関係する構造をマークアップします。一方、「柱は、偶数頁にはタイトルを 奇数頁には著者名を入れよう、ノンブルは頁下部中央端からxxミリに...」 というような版面のデザインはタイプセットのプロに、あるいは押し着せに 任せてしまってよいという発想です(当然自分でやってもよい)。
つまり書き手が直接文書構造の命令を記述しなければならず、書き手が文書を 作成している最中は、仕上がりのイメージが確認できないわけで、 ここがワープロとの大きな違いであり、この本性で使いにくい、面倒との印象から LATEX を敬遠する方もいます。
しかし印刷文化を指向しているだけあって、タイプセットの仕上がりの素晴らしさは 定評のあるところで、特に欧文処理と数式組版は充実しています。 商業印刷にも耐えうる調整が可能で、LATEX の組版結果で写植を行い印刷した 例は多数あります。
ワード間の空白調整、右揃えを計算しながら、行整形を行います。 ある基準で単語を次行に分割する必要が発生すると、ハイフネーションの パターンにしたがって適切なハイフネーション分割を行います。 ただし、あくまで計算機に登録したパターンに基づいているので、よくみると若干の 難がある場合もあるようですが。 例外に弱いところはしようがない気もしますし、補正の手段は当然用意されています。
日本語の場合は禁則処理は当然として、段落最後の行に一文字しかないような醜い 組版をできるだけ避けるような工夫を行います。 ルビや割注など日本の印刷文化に特有の組版についても実現するマクロ(応用命令)が 出回っており、容易に入手できます。 文字サイズについても一般的な``ポイント (pt)''のほか``級 (Q)''や``歯 (H)''と いった指定ができるようになっています。
いわゆる合字 (リガチャ)(``ff'',`` fi'',``fl'') やカーニング (``We'') など、欧文独特のプロポーションは得意とするところです。 多くのワードプロセッサとは異なり、サイズに応じたデザインでフォントを利用する ところも印刷文化への指向を示すものでしょう。 5 ポイントのフォントは 5 ポイントで出力されたときに最も美しく見える ようにデザインされており、10 ポイントで設計したものを縮小したものとは見栄えが 異なります。漢字の場合はこういう工夫がありません。
欧文のフォントはもちろんキリル文字が利用できるほか、ギリシア文字、 サンスクリット文字などが無料で入手可能ですし、 絵文字など独自の体系を追加することも可能です。
アクセントや特殊文字はフランス語やドイツ語など西欧で用いられるもののほか、 北欧諸語・東欧諸語で使われるものが利用可能です。 EC フォント (European Computer Modern Fonts) とよばれる、 アクセント付き文字も合成ではなくプロパーでデザインされたフォントが 利用できます(表 4.1)。