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はじめに

筆者も還暦を迎え,クソ忙しいばかりだったシステムエンジニアの仕事もひと段落したこともあって,これまで余暇に血道を上げてきたことどもについての文章を,印刷物にしておきたい衝動に駆られた。自伝を出版したいという老人が多いとは聞くが,自分の半生を書き遺したいという気持ちは筆者には全くなく,過去に記した文章を今一度振り返り,整理,印刷して,友人たちに読んでもらいたいという思いが強かった。校正については,俳句・短歌書籍出版社の編集部にいた妻にお願いした。

題して『狂溟集』私家版。過去にブログ等で公開した文から掲載するものを選定し,編集・組版し,印刷業者に依頼して,五冊だけ印刷していただいた。題名は,筆者の敬愛する一休禅師の『狂雲集』に倣ったことを告白しておく。雲ではなく昏い海。

著者自身は普通に学校を出て普通に仕事に就き普通に妻を得て普通に子供を育てた普通の常識人との自覚がある。『狂溟集』は仕事に狂い,文学に狂った常識人の狂の一面。狂の要素は常識的社会人にも必須の属性ではないかという気がする。多様性とかポリティカルコレクトネスとかコンプライアンスとかばかりでは,本当にこころが逝ってしまうと思う今日この頃。吉田松陰は弟子たちに「諸君,狂いたまえ」と語ったと伝えられる。まさに名言だと思う。

『狂溟集』私家版の主な内容は以下のとおり。

  • 漢詩文集: 自作漢詩作成支援ツール misima を利用して拵えた七言絶句と,それにまつわる散文の集成。
  • 文學贅言: 読んだ書籍の感想や,計算機本業に関わる随想を書き散らしたもの。
  • SLAVISTIKA 露文学: 学生時代から研究してきたロシア文学についての雑文集。東京大学大学院スラヴ語スラヴ文学研究室年報 SLAVISTIKA に投稿し,出版された論考を含んでいる。ただし,『狂溟集』掲載にあたり,東大の論文集では論文の枚数制限により省略した露日対訳文を付加して,読者の便を図った。


本作りのこと

印刷入稿用組版のため,文書組版処理システム LaTeX を全面利用した。mac OS 用に構築した TeXLive 2022 システムである。これにより生成したフォント埋め込み PDF を Ghostscript によりアウトライン PDF に変換することで,印刷所のイメージセッターが処理できるデータとした。

『狂溟集』ではロシア語,教会スラヴ語,漢文等,日本語現代文との混植の観点で特殊な組版を行う必要があり,以下の LaTeX パッケージやフォントを利用した。

  • 文書スタイル: tbook 縦組みクラス。B5,12ポイント。
  • 和文: 齋藤修三郎氏作 OTF パッケージ。Adobe-Japan1-7 OpenTypeフォント,ぶら下げ組み等伝統的和文印刷様式のための機能をサポートするパッケージ。
      齋藤修三郎氏作 ipamjm パッケージ。IPAmj 明朝フォントを利用するためのマクロと vf フォント。
  • 和文フォント: ヒラギノ明朝及びゴシック mac OS 標準。Adobe-Japan1-7にない一部漢字については,IPAmj 明朝フォントを利用した。
  • 欧文フォント: LaTeX 標準 Garamond フォントパッケージ。
  • 数式フォント: LaTeX 標準 txfonts Math Times フォントパッケージ。
  • 漢文・訓点: 藤田眞作先生作 sfkanbun パッケージ。
  • ロシア語: LaTeX 標準 BABEL システム russian 言語環境。
  • ロシア語フォント: OldFonts OpenType キリルフォント集。Cyrillic Academy 書体。
  • 教会スラヴ語: OldSlav パッケージ。著者自作の教会スラヴ語・古スラヴ語組版マクロ集。BABEL システム oldchurchslavonic 言語環境。
  • ルビ・圏点等和文組版: 奥村晴彦先生作 okumacro パッケージ。

印刷は,株式会社イタミアート・冊子製本キングサービスに依頼した。参考までに印刷仕様を以下に上げておく。2022 年 9 月時点の価格は税込 1 冊単価 1,860 円だった。

  • 形式: B5 無線綴じ冊子
  • 本文紙種: 上質紙
  • 本文斤量: 標準 90kg
  • 本文色数: 両面モノクロ
  • 表紙紙種: アイベスト
  • 表紙斤量: 最厚手 260kg
  • 表紙色数: 両面カラー
  • 印刷ページ数: 300 ページ(表紙,見返しを含む)
  • 綴じ方: 右綴じ

『狂溟集』私家版ダウンロード

『狂溟集』私家版 2022年10月3日初版

本 PDF は,原稿ファイルを LaTeX でコンパイルして DVI ファイルを生成し,DVI ファイルを dvipdfmx にてフォント埋込指定で処理することで,生成したものである。印刷業者に依頼する場合は,埋め込んだフォントをアウトライン化(ベクトル画像変換)しておく必要があるため,さらに本 PDF に対し Ghostscript プログラムを用いて以下のように処理することで,アウトライン PDF を生成し,それを入稿した。

$ gs -o kyomeishu-ol.pdf -dNoOutputFonts -sDEVICE=pdfwrite kyomeishu.pdf
	    

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