著書『狂溟集』についての作成事情もろもろについての備忘録。
獨リ酌ミテ相ヒ親シム無シ…
筆者も還暦を迎え,クソ忙しいばかりだったシステムエンジニアの仕事もひと段落したこともあって,これまで余暇に血道を上げてきたことどもについての文章を,印刷物にしておきたい衝動に駆られた。自伝を出版したいという老人が多いとは聞くが,自分の半生を書き遺したいという気持ちは筆者には全くなく,過去に記した文章を今一度振り返り,整理,印刷して,友人たちに読んでもらいたいという思いが強かった。校正については,俳句・短歌書籍出版社の編集部にいた妻にお願いした。
題して『狂溟集』私家版。過去にブログ等で公開した文から掲載するものを選定し,編集・組版し,印刷業者に依頼して,五冊だけ印刷していただいた。題名は,筆者の敬愛する一休禅師の『狂雲集』に倣ったことを告白しておく。雲ではなく昏い海。
著者自身は普通に学校を出て普通に仕事に就き普通に妻を得て普通に子供を育てた普通の常識人との自覚がある。『狂溟集』は仕事に狂い,文学に狂った常識人の狂の一面。狂の要素は常識的社会人にも必須の属性ではないかという気がする。多様性とかポリティカルコレクトネスとかコンプライアンスとかばかりでは,本当にこころが逝ってしまうと思う今日この頃。吉田松陰は弟子たちに「諸君,狂いたまえ」と語ったと伝えられる。まさに名言だと思う。
『狂溟集』私家版の主な内容は以下のとおり。
印刷入稿用組版のため,文書組版処理システム LaTeX を全面利用した。mac OS 用に構築した TeXLive 2022 システムである。これにより生成したフォント埋め込み PDF を Ghostscript によりアウトライン PDF に変換することで,印刷所のイメージセッターが処理できるデータとした。
『狂溟集』ではロシア語,教会スラヴ語,漢文等,日本語現代文との混植の観点で特殊な組版を行う必要があり,以下の LaTeX パッケージやフォントを利用した。
印刷は,株式会社イタミアート・冊子製本キングサービスに依頼した。参考までに印刷仕様を以下に上げておく。2022 年 9 月時点の価格は税込 1 冊単価 1,860 円だった。
本 PDF は,原稿ファイルを LaTeX でコンパイルして DVI ファイルを生成し,DVI ファイルを dvipdfmx にてフォント埋込指定で処理することで,生成したものである。印刷業者に依頼する場合は,埋め込んだフォントをアウトライン化(ベクトル画像変換)しておく必要があるため,さらに本 PDF に対し Ghostscript プログラムを用いて以下のように処理することで,アウトライン PDF を生成し,それを入稿した。
$ gs -o kyomeishu-ol.pdf -dNoOutputFonts -sDEVICE=pdfwrite kyomeishu.pdf