その他お気に入り since Feb.16 2003 |
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いわゆるクラシック音楽は、芸術的評価や演奏スタイルが確立しているが故に、一方で自動化した退屈な音楽にも満ち溢れている。 これに対し古楽や現代音楽には、音楽の今日的意義を模索しようとする個性豊かなレコードが多い。ジャズやロックの優れたパフォーマンスと同じく何か参加を呼びかけるような姿勢がある。 このページでは、ジャンルに拘りなく、そんな音楽のお気に入りを少し。
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ブクステフーデ 5年前横浜の HMV の視聴ブースで耳にした時、魂を揺振られる感動を覚えた。鈴木雅明とバッハ・コレギウム・ジャパンの存在を知った盤でもある。
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タブラトゥーラ、作者不詳の仏・英・伊・西の古楽 放浪というのがタブラトゥーラの音楽の一貫したモチーフでないかと思う。中世やルネッサンスの音楽とともに彼らの新作を聴いていると、ひとたび触れたのちは二度と出逢うことのない音楽の、かりそめのはかない大道芸的本質に思い至る。 バッハ・コレギウム・ジャパンといい、タブラトゥーラといい、日本の音楽家がいかに成熟し、世界のなかで独自の境地を占めるようになったかを示す証である。
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Hildebrandston フェラーラ・アンサンブルによる15世紀ドイツのアノニマスの声楽を中心とした集成で、"Ich sachs eins mals den liechten morgensterne" など心が洗われるようなアルバムである。
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ヴィヴァルディ かつて NHK-FM で「バロック音楽の楽しみ」という番組があった。ウィーク・デイの朝 6:15 から 45分間、極めて質の高い特集を組み、皆川達夫氏など、一流の音楽研究者が解説を担当していた。このヴィヴァルディの協奏曲集のレコードは「ヴィヴァルディとバッハ」というプログラムで知った。とくに作品3-11は輝かしく堂々たる演奏で、そのフーガは壮大な伽藍を響きわたる様を彷彿とさせて、その後何年もこの盤を探し回った記憶がある。日本ではヴィヴァルディといえばイ・ムジチが定番であるけれども、私にとってイタリア・バロック演奏ではイ・ソリスティ・ヴェネティが好みである。
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Sallinen, Riley, Pärt, Zone, et al. クロノス・クヮルテットは弦楽四重奏という形式を通じて音楽の今日的意義を伝えようとする最も刺激的なグループである。彼らはライリー、グラス、スカルソープと並んでバルトーク、ウェーベルンという現代の古典も取り上げるが、私にとって、クロノスの演奏は他の四重奏団と比較して良いか悪いかなどということを超越している。彼らの現在進行形への指向、「音楽的活動」そのものに意味がある。 "Winter Was Hard" は彼らの仕事に初めて私が触れた盤で、マンハッタンの場末で不意に現代人のソウルを食らわされたような感じがしたものである。太田裕美がジョン・ゾーンのセッションに参加していることも大きな驚きだった。
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メシアン タッシは今日の室内音楽への愛情に満ちたグループである。それぞれの楽器について最高の名手であり、武満、メシアン、ウェーベルン、ストラヴィンスキーのレコードはどれもすべて忘れられない名演ばかりである。このメシアンの四重奏のレコードは、彼らの活動の初期に録音されたもので、とくに彼らの思い入れの強い一枚であると思う。 メシアンは戦時中ドイツの捕虜収容所で、この不朽の作品を構想し、書き上げ、初演をしたという。黙示録の圧倒的な壮大さにおいて「子どもの口ごもり」にすぎないと作曲家は述べているが、その「口ごもり」は非人間的な戦争の時代から悲痛なリアリティをもって現代に届いてくる。
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Chick Corea, Gary Burton 学生時代、レンタル・レコードが流行り始めたころ、友人と思い思いの盤を借りて酒盛りをしつつ聴いたものである。そのなかでこのチック・コリアの、弦楽四重奏とヴィブラフォンとの珍しい競演のレコードを見出した。私がこれを選んだ時、友人たちはその編成に少し「重さ」を感じてはじめは敬遠していたが、いざ再生すると評判がよかったのを思い出す。 ピアノとパーカッションの軽快なリズムが、クラシックな弦楽四重奏と絶妙なクロスオーバを繰り広げていて、趣味がよい。
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Shankar インドのシャンカルと北欧のヤン・ガルバレクの興味深いレコード。ECM レーベルは非常にインセンティブな音楽を送り出してくれる。 10弦からなるエレクトリック・ヴァイオリンとサックス、タブラなどのアンサンブルは、へんな東洋風の味付けもなく理屈抜きで楽しめる。このレコードを見つけた時は掘り出した満足感を覚えたものである。
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Pink Floyd 70年代末、ソ連のアフガニスタン侵攻などきなくさい冷戦時代、またもや軍事的な圧力によって人間性が踏みにじられるのではないかという危機感が世界中に漂っていたように思う。私は高校から大学に進学するあたりで受験勉強で抑圧されるなかにも、そんな時代の暗い予感に何か先鋭的な気分に駆り立てられていたような気がする。 ロックもビートルズやクイーンの次の世代において、ブラック・ユーモアに満ちた攻撃的、反体制的色調が濃くなったように思う。とりたててロックが好きであったわけではないが、このピンク・フロイドのザ・ウォールはそんな私の青春時代の一時期を確かに占有していた。
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Eagles これも70年代を代表するロックの名作。飼い殺しのような閉塞感が伝わってくる。 受験勉強で徹夜して、夏のひんやりとした薄明のなかで "Pretty Maids All in a Row" をよく聴いたものである。
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U2 U2 の初期の気合いの入った盤。 "Where the Streets Have No Name" を FM で耳にして釘付けになった。1987年のことだったと記憶する。 1980年代から90年代前半にかけて日本人は大きく変質した。努力や真面目といった徳性が軽んじられ、ジャパン・アズ・ナンバーワンなんて謹みのない底の浅い時代になった。バカさ加減も頂点に達したこのころ、米国の骨太のロックを聴いて心あるひとは憂国の情にかられたのではないか?そんなことを考えたものである。
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中島みゆき 中島みゆきは NHK「プロジェクトX」のテーマソングでいま再びメジャーの音楽シーンに登場しているが、私にとってその名を口にするのは感情のお里が知れるような恥ずかしさを禁じえない。高度経済成長、学生運動の混迷を経て、経済的/社会的成熟を遂げた70年代、80年代の日本にあって、ものごとを斜に眺めないではおれない歪曲された自我の表現であったと思う。 「臨月」は大学時代、友人のアパートで「写楽」のヌード・グラビアや、いまでは伝説的になったマンガ雑誌「ガロ」を見ながら、— とくに「夜曲」を — 何度も何度も聴いた。
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中島みゆき 「オールナイト・ニッポン」でがなりたてる — 少々下品な — 中島みゆきと、レコードの暗い中島みゆきとのギャップは、同様に屈折した同時代の人間にはよく理解できたのではないだろうか。 「砂の船」、「歌姫」など中島みゆきのナンバーのなかで最も心に沁みるものである。
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大貫妙子 大貫妙子の音楽は「クリシェ」以来常に私の大事な活力である。「黒のクレール」は日本のポップスにおける最高傑作のひとつだと信じる。 彼女はその後もすばらしいアルバムを発表し、最近でも「attraction」や「ensemble」でいよいよ成熟した音作りを見せてくれている。力まず、立ち止まらず。こんな年のとり方をしたいものと思う。
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